村上正邦・平野貞夫・筆坂秀世「自民党はなぜ潰れないのか―激動する政治の読み方」

村上正邦、平野貞夫、筆坂秀世の三氏の鼎談という形(最終章では亀井静香が加わる)で自民党を中心とした政治に関する話がまとめられている。政治に関する知識があるという前提で話が進んでいくので、そういう知識がないと読むのは難しいかと思う。私としては興味深く読むことができた。すべてが真実かどうかはわからないとしても、裏表のなさは感じる。全てに対して共感できるわけではないが、三氏とも教養も含めた知識も一通り備えていることは伺えるので、それなりに説得力はあると思う。知識については年の功もあるだろうが。現職国会議員にそういうものを持っている人がどれだけいるかと考えると疑わしくなる。

以下、平野貞夫のちょっといい話。

麻生太郎の話から(p.66)

平野 そもそも親父の麻生太賀吉という政治家に問題があるんですよ。福永健司、保利茂、麻生太賀吉、坪川信三は、麻雀ばっかりやってたんだから、吉田側近の中でいちばん評判が悪かった。それで林譲治、小沢一郎の親父の小沢佐重喜、益谷秀次なんかが苦労ばっかりしていた。

自民党と社会党が裏でつながっていた話(p.87)

平野 地下水脈でつながっていたのが、表に出てきた。社会党には巨額の金が流れていました。社会党の何十周年記念かで、金丸信は社会党の田辺を通じて億単位の金を渡していますよ。

その後、衆議院の定数是正の法案を出したときに、社会党がなかなか言うことを聞かなかった。言うことを聞かせるために、僕がその理屈を考えてメモを作ったんですよ。それは「選挙制度というのは、最大の政治倫理法である。これを審議拒否するというのは、政治倫理に反するということだ」という内容でした。ところが金丸は勘違いして、「あんなに金をやっているのに協力しないのは政治倫理に反する」と言ってしまったんです。大騒ぎになりましたよ。

角田義一に野党を統一するアイデアを聞かれて(p.170)

平野 (略)それで私は大きな声で「それは民主党も社民党もそれから仲間の無所属も全員共産党に入党すりゃいい」って言ったわけよ。そうしたら市田書記局長が怒ってね。「平野さん、ここは本会議場ですよ。冗談言わないでください」って(笑)。そうしたら角田が「そりゃあいい案だけど、おまえなんか入れてくれるかどうかわからんぞ」って(笑)。

衆議院議長を土井たか子にしようと思っていたら、連合山岸章会長が田辺誠に「おまえやれよ」と言ってしまい、田辺議長という雰囲気になってしまった中、田辺誠に温州みかんを土産に説得に行ったとき(p.234)

平野 田辺さんの家へ行きまして、口上を言いましたら、田辺さんも喜んでくれましてね。「社会党の国会議員にそんな気を使う人間はいない」「夏にみかんが食えるなんて」と。田辺さんの方から「心配してくれてありがとう」って。「一切任せるから心配するな」と言うわけです。やはり政治家ですよ。

筆坂 それは大したもんだね。

平野 その代わり後で「議長をつぶしたのは平野だ」って人前では悪いことを言うわけですよ。冗談だけどね(笑)。

筆坂 そりゃしゃあないね。

最後のは本当にいい話か。