読書一覧

津田大介「Twitter社会論 ~新たなリアルタイム・ウェブの潮流」

私はTwitterをやっており、@tsudaさんもフォローしているのだが、その中で興味を持って購入した。私が新書を買うのはかなり珍しいことである。

第1章でTwitterに関する一般論、第2章で筆者のTwitter活用法、第3章でTwitterが現実社会に与えた影響と具体的事例が記されており、最後に筆者とTwitterユーザーでもある勝間和代氏との対談を載せている。第3章の分量がアンバランスなまでに多いのだが、「Twitter社会論」の通り、本書のメインはこの章であり、いちばん読ませる内容になっていて、この構成は功を奏していると感じた。特に外国の事例は、私自身よく知らなかっただけに興味深かった。ただ、日本の政治に関する言及については、ありがちな理想論に走っているように感じた。

Twitterが現実社会に影響を与える可能性を秘めている、という点に少しでも興味を持っている人は読む価値があると思う。逆に単にコミュニケーションツールとしての役割くらいしか期待していないのであれば、あまり興味を感じない内容なのかもしれない。

そういえば、ここまで書いて思い返したことは、現実社会に影響を与えるサービスって、日本発ではなく外国からやってくることが多い、ということだ。まあ、よく言われていることだけど。

Twitter社会論 ~新たなリアルタイム・ウェブの潮流 (新書y)

Twitter社会論 ~新たなリアルタイム・ウェブの潮流 (新書y)


松村劭「新・戦争学」

歴史を学ぶにあたって必ずついてまわるのが戦争である。私は、近代戦は全く疎いのでそれについて書かれている本書を読んでみた。いくつか出てくるたとえ話(ビジネスとか相撲とか)がちょっと要らないなとか、書かれていることが一文民には考え方が及ばない部分もあったりするが、あとは概ね肯定的に読むことができた。戦術面はもとより、戦略面でも、韓国の併合を、海洋国家の日本が大陸国家の性格もあわせもつ「両棲国家」になってしまったということで、二十世紀最大の失敗と断じているあたりは成る程と思った。当時の日本の国家戦略の稚拙さを思う。今もあまり変わっていないのかもしれないが。

また、本書では戦争の主たる原因は心理的理由であり、その多くは「恐怖」であると記している。この言も心に留めておくべきであろう。

私はどちらかと言えば非戦主義者で、そういう人は日本にも多いと思うのだが、「戦争はいけません」だけで終わってしまうと、歴史は繰り返されてしまうように思うのだ。外国との交戦経験が極端に少ない日本だからこそ、有事になる前の段階で、戦争に対して客観的な分析、理解を充分に行う必要があるように思う。

新・戦争学 (文春新書)

新・戦争学 (文春新書)


青木栄一「鉄道忌避伝説の謎―汽車が来た町、来なかった町」

「鉄道忌避伝説」というのは、鉄道が各地に敷設された時期に、その鉄道を自分たちの街に敷設されることを反対した動きがあったという言い伝えのことを指している。巷では常識として広まっている鉄道忌避の動きがあったという伝承が、実は大半が事実と反していた、というのが本書の内容である。昭和中頃に作られた市史などの内容が充分な検証がなされていない、と書かれているのはその通りで、伝わっていることを鵜呑みにして書いていたり、自らの都合のいいように書かれていることもままある。また、その時代に起きた事象を後世の人の感覚で解釈している、という記述には思わず納得した。特に私が最近感じるのは、「真の歴史を知っている」と言っている人に限って、現在的な視点で歴史を解釈しているのではないか、ということだ。読んでみて、鉄道忌避伝説の具体的な事例よりも、歴史に対しての検証のあり方を示しているという点で、興味深い一冊だった。

鉄道忌避伝説の謎―汽車が来た町、来なかった町 (歴史文化ライブラリー)

鉄道忌避伝説の謎―汽車が来た町、来なかった町 (歴史文化ライブラリー)


今枝由郎「ブータンに魅せられて」

ブータンに住んでいた経験がある著者がブータンについて記した本。好意的であるが客観性を持った視線でブータンについて書かれている。日本とブータンではかなりの違いがあるが、どちらがいい、悪いではなくて、自国民の特性にあった道を選べばいいのではないかと思う。特に宗教的なバックボーンが大きく違う。ただ、道路建設などの国土開発について書かれた件では、日本とブータンで持っているものが違うということもあるが、ブータンのほうが合理的であり、日本のほうが無駄なことをしているのではないか、と考えさせられた。

ブータンに魅せられて (岩波新書)

ブータンに魅せられて (岩波新書)


塩田潮「民主党の研究」

民主党の代表を務めた、鳩山、菅、小沢のパーソナリティに関する記述がけっこう多いのは、民主党が代表の性質に大きく依存しているゆえんか。特に小沢現代表の記述が多い。代表に対象を絞ったほうが書きやすいという事情もあるのかもしれない。結党からの出来事は一通り書いてあるので、過去をおさらいする、という点ではいい書かもしれない。

民主党の研究 (平凡社新書)

民主党の研究 (平凡社新書)


大城将保「琉球政府」

ひるぎ社という会社が出している「おきなわ文庫」というシリーズの文庫本。Amazonでは取り扱っていないようだ。

戦後の沖縄の歴史について書かれている。沖縄の歴史についてはほとんど知らないゆえに、事実関係を拾っていくだけでもけっこうためになった。沖縄が持つ特殊性については、配慮すべきだろうという思いは改めて感じた。

主席公選というのが一つのテーマになるのだが、先の沖縄県知事選挙の20代の投票率は40%台とのこと。もっとも、埼玉県はもっとひどいのだが。ただ、アメリカ世を知らない世代が増えていくと沖縄もまた変わっていくのだろうとは思う。


筑波君枝「こんな募金箱に寄付してはいけない」

書名から受ける印象とは裏腹に、広義のボランティアについて広く浅く書かれている。「第1章 こんな募金箱にお金を入れてはいけない!?」の内容が一冊分あることを期待していたのだが、内側についての考察はなしに、次の章へと進んでいく。ちょっと期待はずれな感があった。

こんな募金箱に寄付してはいけない (青春新書インテリジェンス198)

こんな募金箱に寄付してはいけない (青春新書インテリジェンス198)


真田信治「方言は絶滅するのか―自分のことばを失った日本人」

思っていたよりも言語学の専門的な内容で、方言の存亡についての幅広い分析を期待していた身としては、肩すかしをくらった感じだ。最後には方言についての提言があるが、その割合は少ない。方言の変容に関する事例を知りたいという人向けの本だと思う。


将基面貴巳「反「暴君」の思想史」

政治思想について書かれた本で、私は政治思想に関する知識がほとんどないので、特に西洋の思想史についての記述は、読み進めるのに苦労したというのが正直なところだ。本書のキーワードの一つである「共通善」という言葉さえも知らなかった。そういう意味では、勉強にはなった。ただ、本書中の現在の日本の政治に対しての記述がどうも浮いているようにもみえた。政治思想史の研究が現代社会から遊離している点を著者も憂慮しているようだが、まさしくその通りであることを確認した。

反「暴君」の思想史 (平凡社新書)

反「暴君」の思想史 (平凡社新書)


星浩「自民党と戦後―政権党の50年」

2004年の参院選後、2005年の衆院選前の時期である、2005年4月に刊行された本なので、自民党の現状として書かれている部分については、2005年の衆院選で大勝してから現在に至るまでとのギャップを感じる部分があるが、2004年頃までの自民党の通史として見れば、よくまとまっている書物だと思う。個人的に感ずるところが大きかったのは、1993年に自民党が下野してからの梶山静六の言葉である。以下に引用する。

「自民党が下野したのは良かった。一、二年は政権からはずれたほうがよい。五五年体制下で三十八年間も政権に在り続けて、緊張感を失って、惰性が続いた。野党になって贅肉を落として、もう一度政権に戻ったら、強力な政党になるだろう。」

筆者も「下野すれば、贅肉がそがれて、理念・政策が明確になり、新しい形の自民党として生まれ変わる可能性もあるのではないか。」と記している。私も、自民党は下野したほうがよくないかと書いたが、それは自民党の再生というよりは、風向きを変えるためのテクニックとしてのことだった。梶山静六の言葉は立派だと思うが、その考えに同調するのは、若手議員はそれなりにいるかもしれないが、幹部クラスの議員となると、どれだけいるか疑問である。さらに、贅肉どころか、禁断の実(=特定団体の大規模組織票)を食べ続けている以上は、もはやかつてのような力を取り戻すことはできないのではないかとも思う。

自民党と戦後―政権党の50年

自民党と戦後―政権党の50年