読書一覧

東海林さだお「丸かじり劇場メモリアルBOX」

「丸かじり」シリーズから108編を精選、という本。ベストアルバムみたいなものか。全部で700ページ弱あって、内容もおもしろいし、一つ一つ読むのはそれほど苦ではないが、一気に読むのはたいへん。

個人的には食材を擬人化する話が好き。

丸かじり劇場メモリアルBOX (朝日文庫 し 14-4)

丸かじり劇場メモリアルBOX (朝日文庫 し 14-4)


竹熊健太郎「篦棒な人々ー戦後サブカルチャー偉人伝」

康芳夫、石原豪人、川内康範、糸井貫二の四氏へのインタビューを中心にまとめられた本。糸井貫二のみ関係者のインタビュー等が中心で最後に本人へのインタビューが掲載されている。どちらかというと「糸井貫二に出会うまで」のドキュメンタリーと言った方がいいか。康芳夫という人物、正直私はよく知らなかったのが、このインタビューはかなり面白かった。体験談そのものが面白いというところもあるが、「オウム真理教に社会科学を勉強している幹部が少なかった」というような興味深い指摘もあったりする。自伝もでているようなので、機会があったら読んでみたい。石原豪人氏の話はホモセクシャルな話が印象に残った感じ。戦中、戦後の話は興味深かったか。川内康範氏の筋の通し方には感嘆した。右翼がどうの、左翼がどうの、カテゴライズされた思想のレッテルを前提で発言している人は氏の考えを知ったほうがいい。糸井貫二という人はほとんど知られていない人だと思うのだが、前述の三氏と並べると異色な感じはする。

人選もさることながら、竹熊氏の四氏に対する敬意が表れていて、丁寧に作られている。読み応えがある、よい本だった。

篦棒な人々ー戦後サブカルチャー偉人伝 (河出文庫 た 24-1)

篦棒な人々ー戦後サブカルチャー偉人伝 (河出文庫 た 24-1)


草野厚「連立政権―日本の政治1993~」

連立政権といえば現在では自民・公明の連立政権であるが、1999年に書かれたということで、細川、羽田、村山、橋本内閣時代の連立政権について書かれている。小渕内閣はこのときは現在進行形だったので少し扱いが特別。わりと堅くまとめられていて、当時の状況が理解できた。特に日本社会党~社会民主党の状況にスポットがあたっている。今の社民党を見ると信じられないが、社民党が自民党が連立を組んで与党だった時期もあったのだよね。

連立政権―日本の政治1993~ (文春新書)

連立政権―日本の政治1993~ (文春新書)


寺谷ひろみ「暗殺国家ロシア―リトヴィネンコ毒殺とプーチンの野望」

イギリスで起こったリトヴィネンコ毒殺事件(検索すると「リトビネンコ」という表記のほうが一般的のようだがここは本書の表記に従う)とロシアの現状についてまとめられた本。リトヴィネンコ毒殺事件のくだりはまだついていけたのだが、ロシアの現状(オリガルヒとかチェチェンとかユーコスとかの記述が出てくる)になると、私がカタカナの名前を覚えるのが苦手で世界史が得意でなかったということもあってか、正直言ってついていけなかった。ロシアって怖いね、という感想を持ったくらい。

しかし、「本書は、事実にもとづく全くのノンフィクションであり、全部、実名である」と最初に書いてあるのはいいとしても、かなり踏み込んだ内容が書かれている本文に続いて、あとがきに書いてある「主にインターネットの情報から事実だけを拾って、構成した。」は、これはロシア流のジョークなのかと思ってしまった。これほどの内容をインターネットから事実だけを拾うって、よほどの眼力なり判断基準なりを持っているのか、それとも無自覚なのか。それでも、ロシアという国が抱える闇の大きさは否定できないことだと思う。

余談だが、寺谷ひろみという著者名からして女性かと思ったら、寺谷弘壬という男性の著者だった。


養老孟司「バカの壁」

言わずとしれたベストセラー本。確かにいいことを言っていると認めるべき点がいくつかあるものの、論がとっちらかっていてまとまっていない。養老氏が話した内容を編集部の人たちが文章化したものということで、そういう”らしさ”がよく出ている。小話の集合体という感じで、一冊の本としての完成度は高くない。小話の中でためになることが多いと感じられれば高い評価になるだろうし、少ないと感じれば低い評価になるだろう。そういう意味では私の評価は中程度か。

結局のところ、書名のキャッチーさでの勝利か。

バカの壁 (新潮新書)

バカの壁 (新潮新書)


太田光・中沢新一「憲法九条を世界遺産に」

爆笑問題太田光と宗教学者中沢新一による対談を中心に構成されている。対談はどうしても内容が散漫になったり、脱線したりしてしまうものだが、憲法九条という明確なテーマを定めている本書もその例外ではない。太田光がボケるのはそれが役回りだからいいのだけど、中沢新一(実はこの人のことはよく知らないのだが、大学生の頃に中沢新一の兄を名乗る人に会ったことがある)もボケに回って、ダブルボケで話が締まらない。中沢が太田に歩み寄って話をしようとしているのだが、それがすべっている感じがした。大事なことを話しているようで、実はあまり価値がないような本、と言うべきかもしれない。

憲法九条を崇拝の対象にするのはどうにも理解できない。単なる法律ではないかと思う。日本という国は島国で攻めるに難く守るに易い、外国との交戦経験も少ない、さらに人の命の価値というのは過去に比べるとあがってきている(多産多死から少産少死)上に、戦争をして得るものというのは過去に比べると相対的に少なくなり、むしろ失うもののほうが多くなってきている、という現状から戦争はしない、どうせしないのであれば法律に「戦争は放棄します」と書いておいたほうがいいよね、くらいに私なんかは考えているのだが。

憲法九条を世界遺産に (集英社新書)

憲法九条を世界遺産に (集英社新書)


毎日新聞旧石器遺跡取材班「古代史捏造」

前に読んだ「発掘捏造」の続編的な本。結局読んだ後に感じたのは、考古学会の閉鎖的な環境だ。疑問を感じる声があったとしても、それに対する圧力の影響で、そういう声が出にくいという状況が垣間見られる。その分、マスコミなどの外部からの力に対しての拒否反応が大きいようにも感じた。私としては考古学とは縁のない人間なので、どうでもいいと言えばどうでもいいのだが、そういう現状で考古学の「再生」が行われるかは疑問を感じた。

古代史捏造 (新潮文庫)

古代史捏造 (新潮文庫)


毎日新聞旧石器遺跡取材班「発掘捏造」

考古学研究家による旧石器捏造事件について、毎日新聞のスクープ記事を発表するまでの経緯とその影響、課題点についてまとめた本。報じただけで終わり、ではなく、このように本にしてまとめるのは意義があることだと思う。かなり慎重な姿勢で取材に取り組んだことがうかがえるが、公表できないような手法の取材をすれば、後でこのように内幕までまとめて本にするということはできないだろう。捏造の現場の撮影から捏造をした研究家を問い詰めるあたりは、かなりスリリングな展開で読み応えがあった。

私は大学時代に少し歴史をかじっていて考古学をやっている友人もいたが、専門課程である程度の教育を受けていると、それにあわせて学問についての作法も学ぶことになる。捏造をした研究家は高校を出て就職して趣味で考古学を始めて、そこから研究家への道を歩み始めた。発掘という実作業で実績を挙げたが、作法を学ぶ機会を飛ばしたゆえにこのような捏造を行ってしまったのではないかと感じた。本来であれば、作法を知っているはずの大学教授といった専門的に長く考古学を研究してきた人がチェックすべきで、考古学界での責任という意味では、捏造によって作り出された成果を支持した研究者がもっとも責任があるのではないかと感じた。

考古学をとりまく環境の問題やマスコミの責任という点にも触れられているが、一般の人に全ての学問に対して興味関心を持って理解をしろ、というのも無理な話で、中には疎ましく思う人がいるのもやむを得ないとは思う。マスコミの責任についても、専門家の発表に疑問を持つまではできるかもしれないが、それを検証するとなるとなかなか難しいのではないか。かと言ってわからないから報じませんというわけにもいかない。そのあたりは難しい。ただ、結果的に捏造だった考古学の結果を町おこしに利用して「原人まんじゅう」とか「原人ラーメン」とか作ったのはかっこわるいとは思った。

発掘捏造 (新潮文庫)

発掘捏造 (新潮文庫)


香山リカ「なぜ日本人は劣化したか」

香山リカといえば、私としてはファミコン通信の連載(「尻に目薬 目に座薬」)をおぼろげながら思い出すのだが、今ではすっかりテレビでもおなじみの顔になって隔世の感がある。

さて、本書であるが、「劣化」という言葉をオールマイティーに使っていて、論に無理が生じていると感じた。とにかく不都合なことがあると「劣化」という言葉で片付けている感じだ。それが、肉体的、精神的、社会的、文化的になものにまで対象が多岐にわたっていて、全体的に散漫になっている。結局、「日本人は劣化している」以上のものが伝わりにくい構成になっている。提出期限ぎりぎりにあわてて完成させた学生のレポートみたいな出来になってしまっている。おそらく、忙しい中あまり時間もかけられずに書いてしまったのだろうと推測する。

なぜ日本人は劣化したか (講談社現代新書)

なぜ日本人は劣化したか (講談社現代新書)


田辺寿夫・根本敬「ビルマ軍事政権とアウンサンスーチー」

学生の頃、ビルマに関する本を何冊か読んだことがあって、その関連で田辺寿夫氏が記した「ビルマ―「発展」のなかの人びと」は読んでいた。それから10年ほど経って、最近になってビルマ情勢がまた関心を集めている。そういうわけで5年前に書かれた本ではあるが、本書を読んでみた。

日本とビルマの関係から、日本に住むビルマの人たちのこと、アウンサンスーチーのこと、ビルマの現状のことなどがよくまとまっている。特に第二次世界大戦での日本とビルマの関係の変遷についての記述は、私はほとんど知らなかっただけに興味深かった。著者の立場からかビルマを民主化しようとする側からの視点で語られているが、読んでさらに思ったのは、軍事政権が民主化に応じるというシナリオはありえないということ。そうすれば自身の存在が危うくなる。おそらくビルマの民主化が行われるためには多大な犠牲が伴われることだろう。アウンサンスーチーという人は立派な人で、そういう覚悟は持っているということを本書からは感じたが、それに多くの国民がついてこれるのかというのは課題のように感じた。どちらにせよ、ビルマ民主化にあたっては現状の軍事政権の解析をして、そこにどう切り込んでいくかというのが必要のように思う。