毎日新聞旧石器遺跡取材班「発掘捏造」

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考古学研究家による旧石器捏造事件について、毎日新聞のスクープ記事を発表するまでの経緯とその影響、課題点についてまとめた本。報じただけで終わり、ではなく、このように本にしてまとめるのは意義があることだと思う。かなり慎重な姿勢で取材に取り組んだことがうかがえるが、公表できないような手法の取材をすれば、後でこのように内幕までまとめて本にするということはできないだろう。捏造の現場の撮影から捏造をした研究家を問い詰めるあたりは、かなりスリリングな展開で読み応えがあった。

私は大学時代に少し歴史をかじっていて考古学をやっている友人もいたが、専門課程である程度の教育を受けていると、それにあわせて学問についての作法も学ぶことになる。捏造をした研究家は高校を出て就職して趣味で考古学を始めて、そこから研究家への道を歩み始めた。発掘という実作業で実績を挙げたが、作法を学ぶ機会を飛ばしたゆえにこのような捏造を行ってしまったのではないかと感じた。本来であれば、作法を知っているはずの大学教授といった専門的に長く考古学を研究してきた人がチェックすべきで、考古学界での責任という意味では、捏造によって作り出された成果を支持した研究者がもっとも責任があるのではないかと感じた。

考古学をとりまく環境の問題やマスコミの責任という点にも触れられているが、一般の人に全ての学問に対して興味関心を持って理解をしろ、というのも無理な話で、中には疎ましく思う人がいるのもやむを得ないとは思う。マスコミの責任についても、専門家の発表に疑問を持つまではできるかもしれないが、それを検証するとなるとなかなか難しいのではないか。かと言ってわからないから報じませんというわけにもいかない。そのあたりは難しい。ただ、結果的に捏造だった考古学の結果を町おこしに利用して「原人まんじゅう」とか「原人ラーメン」とか作ったのはかっこわるいとは思った。

発掘捏造 (新潮文庫)

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