読書一覧

宮脇俊三「ローカルバスの終点へ」川白

今月から始める、宮脇俊三著「ローカルバスの終点へ」の精読企画。1987年から88年に書かれた記述内容が2020年現在どうなっているのかを中心に記していく。基本的に月末更新。今回は川白(北海道古宇郡神恵内村)。
岩内ターミナルから川白まで行く北海道中央バスの路線バスは現存している。それどころか、季節運行ではあるが一日二本、川白の先の神恵岬まで路線が延伸されている。そういう意味では川白はローカルバスの終点ではなくなった。そもそも当時は国道が川白までしか通じていなかった。積丹半島がつながる国道が開通したのは1996年のこと。岩内から川白まで行く便も当時は一日二本だが、午前中の便が一本増え、一日三本、川白までバスが至っている。ただし、岩内から当時は赤石まで、現在はその二停先の大森まで行く区間便は、現在は二本減の一日七本になっている。
Google Mapで見ると、現在川白にある宿泊施設は二軒。氏が宿泊した「たかだ旅館」は現存していない模様。また、川白小中学校も1998年に閉校になっている。現在神恵内村の小学校、中学校はそれぞれ一校づつのみ。


カベルナリア吉田「沖縄の島へ全部行ってみたサー」

Kindle Unlimitedの対象になっていたので読んでみた。
沖縄の以下の島に行った訪問記である。

  • 慶良間諸島:○渡嘉敷島、○座間味島、○阿嘉島、○慶留間島
  • 粟国島:○粟国島
  • 久米島周辺:×久米島、×渡名喜島、×奥武島、×オーハ島
  • 本島北部:×伊是名島、○伊平屋島、○野甫島、○古宇利島、×水納島、×伊江島、○瀬底島、○屋我地島、○宮城島
  • 海中道路周辺:○平安座島、○浜比嘉島、○宮城島、○伊計島
  • 本島東部・南部:○久高島、×津堅島、○奥武島
  • 大東諸島:○南大東島、○北大東島
  • 宮古諸島:○宮古島、×大神島、○池間島、○伊良部島、○下地島、○来間島、○多良間島、×水納島
  • 八重山諸島:○石垣島、×小浜島、×黒島、○与那国島、○西表島、○由布島、×新城島、×鳩間島、○竹富島、○波照間島
  • 那覇近郊:○瀬長島

○×は私の訪問有無である。半分以上は行っている。それだけに言えるが、島に行って書くのが仕事とはいえこれだけの島に行くのはかなりたいへんなことである。しかも、陸上移動は徒歩とバスが主でこれにも好感が持てる。私は沖縄の場合はバイクが主なので、大きな島と架橋している島は割と楽に行っているというのはある。
2003年の出来事を書いているということで、情報としては古くなっている部分もある。渡嘉敷と座間味を結ぶ船も今ではある。また、古宇利や伊良部の架橋前の時代の記述があるという点では貴重な記録となる。個人的には伊良部は架橋前と後で行っているが、古宇利は架橋後に行っただけなので。
こういう本を読むと沖縄の離島に行きたくなるが、さすがに離島はコロナが収束からだな、と思っている。


山下ルミコ「東武東上線 ぶらり途中下車」

東武東上線、越生線の全駅の周辺スポットやトピックスがまとめられた本。地味な駅でも神社仏閣くらいは周辺にあるので、そういうのが載っている。ちなみに志木は4つのスポットが載っているが、すべて志木市のスポットであった。古い時刻表も載っていて、昭和17年では池袋から志木まで27分と今とあまり変わらなかったりする。ただし、運転本数は30分に1本なので、今よりもだいぶ少ない。


市川宏雄「山手線に新駅ができる本当の理由」

品川~田町間にできる山手線新駅について書かれた本。同地の近くまで通勤しているので読んでみることにした。2012年に書かれた本なので、まだ上野東京ラインが開業していないなど、古くなっている部分もあるが、新駅についての基礎知識が書かれているので、それについて識ることができるのはいい。ただ、この新駅だけで本を一冊作るとなるとどうしても蛇足な部分が出てくるなとは思った。本書の中で、品川駅港南口や汐留の開発を成功しているとはいえない、と断じていることは評価できる。汐留はあまり行ったことはないが日本テレビという核があるだけましかなと思う。品川駅港南口はよく行っているが、はっきり言って街づくりに失敗していると思っている。どうも港区の旧芝区域の新しい街はどこも魅力に欠けているように感じる。本書では山手線新駅周辺の街づくりはそんなことがないようにという期待をしているが、個人的にはその二の舞、三の舞になる可能性もあると危惧している。


神山健吉「埼玉の地名―新座・志木・朝霞・和光編」

新座市、志木市、朝霞市、和光市の細かい地名の由来を記したという、かなりニッチな本である。そういう本でもAmazonで取り扱いがあるというのが驚きである。新座市でも昔の小字レベルだと私の知らない地名が載っていた。XXn丁目に上書かれて消えてしまった地名があるということを改めて認識した。またこのあたりは新羅の影響が大きく、新座、白子、新倉などは皆新羅が由来の地名となっているということである。地名の由来を通じて地域の歴史を学ぶこともできる。


田代博「「富士見」の謎」

富士山はどこから見えるか、ということをカシミールのデータなどを使いながらまとめた本。新書でそれに特化した本が作られるというのも驚きだが、それだけ富士山というもののステータスが高いということか。日本のどこから富士山が見られるかということを記した地図が載っている。富士山を見ることをとことん追及する、という観点がまるでなかったが、そういう世界もあるのだと識ることができた。


加藤佳一「バスで旅を創る!―路線・車両・絶景ポイントを徹底ガイド」

乗ることで旅気分が味わえるバス路線を紹介した本、と言えばいいか。「一日乗車券でレトロなバスを味わい尽くす」と言いつつ一日乗車券がない路線を紹介していたり、「バスは電車より速い」と言いつつ電車より遅いバス路線を紹介していたりと、全体的に「ゆるい」という印象。他にも路線バスになじみがない人にはわかりにくいだろうという表現があったり、三重の御座に行くのに、船に乗るのは”旅”ではなく許されない、バスに乗るのが”旅”なのだ、と謎なまでにバスに肩入れしていたり、どうも雑な感じがする。御座にはバスで行って、船で帰ってきたことがあるが、私の主観だと船のほうが”旅”らしさを味わえると思う。

余談だが、私が先日行った西表島のバスが掲載されている。当時は大原港が最南端のバス停だったようだ。


半藤一利+保阪正康「昭和の名将と愚将」

昭和時代の軍人を、「名将」と「愚将」に分けて論じている。対談形式でわりと読みやすいという面はある。名将編は雑誌の掲載をまとめたもので、愚将編は語り下しとのこと。

結局、名将は自分の持ち場では功を上げたもののそれが全体の成果にならず、愚将の所行も相まって、あういう結果になってしまったわけだが、その結果へのキーパーソンとして、本書に直接は取り上げられていないものの、東條英機の名前が何度か出てくる。

あと、興味深かったのは、特攻や玉砕というのは本来日本の文化にはない考え方であって、それを進めていったのはそのときに日本人は変調をきたしていた、というような件。特攻や玉砕に限らず、本来日本の文化ではないものや、それほど伝統がないものを持ち出してきて、「日本人ならこれをすべきだ」とするケースはままある。自分たちが推し進めたい考えをナショナリズムを利用して広めるのは俯瞰的にみて望ましくないとは言えるが、当事者になると、その渦に呑み込まれてしまうことも否定できない。

先の戦争に関して多方向からの研究はされるべきだし、このような本が出ることはけっこうなことだと思う。記憶が生々しいという面はあるのだろうが、これについてはだいぶ月日が経ってきている。あとどうしても右とか左とか政治思想面云々が絡み出すというのもあって、そういう面も関係することは否定しないが、そのことが主となることについては不幸なことだ。

昭和の名将と愚将 (文春新書 618)

昭和の名将と愚将 (文春新書 618)


浅羽通明「右翼と左翼」

右翼とか左翼とか言われているけど、実際のところ右翼、左翼って何?というあたりが書かれている。話し言葉で書かれているのが個人的には向かない感じがしたが、内容自体は興味深いものだった。西欧での起源については「議会の右側、左側」レベルのことしか知らなかったのでためになった。戦前において右翼と左翼が共闘関係になったこともあったのは別の本で知っていたが、そのことについて「ワークシェアリング」という言葉を使っているのはおもしろかった。

結局、現在の一般人が称している「右」「左」は、自己のあり方を形づけるためのものに過ぎないのではないかと再実感した。昔に比べて今は何らかへの所属意識が希薄になっているわけだが、その代わりに帰属すべき所属にそういう思想が使われているだけではないか、と。人が完全に無所属になるのは難しいのかもしれない。

右翼と左翼 (幻冬舎新書)

右翼と左翼 (幻冬舎新書)


奥野修司「沖縄幻想」

今回、沖縄に行くにあたって事前に読んでみた。若干話が脱線したり、交通に対する見解については違和感を感じる部分もあったが、あまり報じられない沖縄の問題について、筆者ならではの視線で多々書かれており、参考になった。補助金漬けの実態についても書かれており、今までの沖縄振興策のあり方の問題にも言及している。米軍基地移設問題も連日報道されているが、それらも含め沖縄にまつわる問題はなかなか複雑で根深いものがあると感じた。

沖縄幻想 (新書y 219)

沖縄幻想 (新書y 219)