青木栄一「鉄道忌避伝説の謎―汽車が来た町、来なかった町」

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「鉄道忌避伝説」というのは、鉄道が各地に敷設された時期に、その鉄道を自分たちの街に敷設されることを反対した動きがあったという言い伝えのことを指している。巷では常識として広まっている鉄道忌避の動きがあったという伝承が、実は大半が事実と反していた、というのが本書の内容である。昭和中頃に作られた市史などの内容が充分な検証がなされていない、と書かれているのはその通りで、伝わっていることを鵜呑みにして書いていたり、自らの都合のいいように書かれていることもままある。また、その時代に起きた事象を後世の人の感覚で解釈している、という記述には思わず納得した。特に私が最近感じるのは、「真の歴史を知っている」と言っている人に限って、現在的な視点で歴史を解釈しているのではないか、ということだ。読んでみて、鉄道忌避伝説の具体的な事例よりも、歴史に対しての検証のあり方を示しているという点で、興味深い一冊だった。

鉄道忌避伝説の謎―汽車が来た町、来なかった町 (歴史文化ライブラリー)

鉄道忌避伝説の謎―汽車が来た町、来なかった町 (歴史文化ライブラリー)