佐久間充「山が消えた―残土・産廃戦争」

私が大学生の頃、授業で佐久間充著「ああダンプ街道」を読むのが必須になっていて、当時はそれなりに感銘を受けて読んだものだったが、その著者が「ああダンプ街道」の続編と言うべき本書を刊行していたのは知らなかった。見つけて早速読んでみた。

建設資材の輸送に伴う環境問題と、産業廃棄物の不法投棄の問題について、千葉県の事例を中心に、各地の事例について記してある。様々な事例を紹介している分、話題が散ってしまっているような印象を受けたが、著者の取材の集大成、という位置づけで考えれば納得はできる。かなり前からこの問題に関わってきたという実績が本書には現れている。人間が普通に生きていくことすらを脅かす理不尽なことに対しての憤りを根底に感じた。

最近、特に大規模な製造業の企業が「エコ」という言葉を使っているが、そういう企業は、自然環境のみならず、人間の生活環境も壊しながら発展してきた、という事実は否めない。特に最近では「Co2削減」という言葉が免罪符となっているような感すらある。「Co2削減」のためにさらなる消費を促すような動きもある。それこそ「ああダンプ街道」で取り上げられたような問題が、環境問題の本流と考えていた身としては、違和感を感じる。

山が消えた―残土・産廃戦争 (岩波新書 新赤版 (789))

山が消えた―残土・産廃戦争 (岩波新書 新赤版 (789))