星浩「自民党と戦後―政権党の50年」

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2004年の参院選後、2005年の衆院選前の時期である、2005年4月に刊行された本なので、自民党の現状として書かれている部分については、2005年の衆院選で大勝してから現在に至るまでとのギャップを感じる部分があるが、2004年頃までの自民党の通史として見れば、よくまとまっている書物だと思う。個人的に感ずるところが大きかったのは、1993年に自民党が下野してからの梶山静六の言葉である。以下に引用する。

「自民党が下野したのは良かった。一、二年は政権からはずれたほうがよい。五五年体制下で三十八年間も政権に在り続けて、緊張感を失って、惰性が続いた。野党になって贅肉を落として、もう一度政権に戻ったら、強力な政党になるだろう。」

筆者も「下野すれば、贅肉がそがれて、理念・政策が明確になり、新しい形の自民党として生まれ変わる可能性もあるのではないか。」と記している。私も、自民党は下野したほうがよくないかと書いたが、それは自民党の再生というよりは、風向きを変えるためのテクニックとしてのことだった。梶山静六の言葉は立派だと思うが、その考えに同調するのは、若手議員はそれなりにいるかもしれないが、幹部クラスの議員となると、どれだけいるか疑問である。さらに、贅肉どころか、禁断の実(=特定団体の大規模組織票)を食べ続けている以上は、もはやかつてのような力を取り戻すことはできないのではないかとも思う。

自民党と戦後―政権党の50年

自民党と戦後―政権党の50年